顔面神経麻痺は鍼灸で本当によくなるのか?
顔面神経麻痺は、顔の片側の筋肉が麻痺してしまうことで麻痺していない方に顔がひっぱられてしまうために、見た目が悪くなってしまうので、どうしても気になってしまう疾患の一つです。
私自身も顔面神経麻痺の方の施術をさせて頂いてきましたが、多くの方が「病院では麻痺が残るかもしれない」、「これ以上の改善は難しい」と言われたので諦めていたようですが、「ネットで調べていたら、鍼灸が出てくるから気になっていた」と話しをされることが多いです。周囲に顔面神経麻痺の人がいて鍼灸を受けていた場合や、普段から鍼灸に通っていたという人以外では、「顔面神経麻痺は鍼灸で本当によくなるのか?」と思っている人が多いです。
1.顔面神経麻痺は鍼灸で本当によくなる?
やっぱり一番気になるのが、本当によくなるのか?というところだと思いますが、今までの経験で言えば、完璧にはならないですが、よくなります。ただ、何故、よくなるのかという部分に関しては、いろいろ研究も行われていますが、はっきりとしたメカニズムは分かっていません。
単純に考えると、鍼をすることで刺激を受け、筋肉のこりの改善、血流がよくなることで、神経の働き、筋肉の動きがよくなって改善していると考えています。
顔面神経麻痺は発症してから1週間ぐらいは麻痺が進行していくことが多いので、最初は顔の違和感から始まって、徐々に動かしにくくなり、朝起きたら突然動かなくなったということもあります。あまりにも長く場合は、他の疾患も疑っていくことがありますし、顔面の神経は脳から出てきているので、顔面神経麻痺になった場合は、しっかり病院で経過観察をしていくのをお勧めします。
病院に通院しながら鍼灸に来る場合は、病院側からすると鍼灸を受けると経過が読みにくくなるので、まれにですが嫌がる場合があります。医師は現代医学でしっかりと管理をして経過を予想、治療を行っているので、他の人にやられると分かりにくくなってしまうのは事実ですしね。例えば、誰かに手紙を書いているのに、他の人が途中で文章を入れて書いたら、全体として読みにくいし、分かりにくい文章になってしまいますよね?
どちらの立場がいい悪いという訳ではなく、本当によくするために、しっかりと経過をみたいという思いからきているので、医師側、鍼灸師側でそれぞれの思いがぶつかってしまうことはあります。
難治と言える物に対しては、効果は難しいという意見もあります。まだまだ十分なエビデンスがある訳ではありませんが、論文を見てみるとラムゼイハント症候群でも改善している事例が取り上げられています。ラムゼイハント症候群は、神経を壊してしまう、水痘・帯状庖疹ウイルスによって生じるので、神経が壊れてしまうと元に戻るのが難しいと考えられています。
麻痺が大分改善しても数か月で、下記のような後遺症が生じる方もいます。
- まぶたが落ちる
- まぶたがけいれんする
- 拘縮
- 動きが変になる
- 病的共同運動
私自身が今まで顔面神経麻痺の方を診させて頂いた方たちは、発症後1~数週間という早期から施術していることが多いです。話を伺うと、「鍼灸を受けたことがあるから、鍼灸を試しに来た」、「過去によくなった人がいるから試しにきてみた」という方が多かったです。確かに、鍼を受けたこともないような人が、「顔面神経麻痺になったら鍼灸だ」という考えにならないですよね。
ただ、顔面神経麻痺になって麻痺がなかなか改善せずに、半年ぐらい経過し、麻痺は残るよと言われた方を紹介で施術させて頂いたこともあります。病院ではすることがないので、2か月に一度ぐらい経過観察に行くだけで、特に何もしていなかったということで、初めて診させて頂いたときには、かなり麻痺が残っているなという状態でした。
幸い、難治と言われるようなラムゼイハント症候群ではなかったですし、中枢性でもなく、末梢性顔面神経麻痺なので、改善していく可能性は高いのではないかなという予測を立て、施術中、施術後での効果と顔の感覚を体験して頂いて、継続した施術を行っていきました。
1回目の施術から効果を実感され、次の施術でも効果が持続していたので、麻痺が気になる部分、まぶたの違和感などを含めて施術していきましたが、週1回、約2か月程度で落ち着いたので、終了とさせて頂きました。顔面神経麻痺だと、感覚の違和感や若干の動かしにくさが残ることがありますが、程度によってはご自身で顔のマッサージをしたり、疲労を貯めないようにしたりすることで、辛さのコントロールできる場合があります。
麻痺が残るものだと諦めていたとしても、やっぱり人の目が気になってしまうので、麻痺が気にならない程度になると、人に会うのも、話をするのも気楽になりますね。
顔に鍼をすることが多いので、内出血を生じる場合がありますが、内出血は数日で元に戻ります。
顔面神経麻痺に対しての鍼についての論文はいろいろ出ていますが、ネットでも読める物を以下に載せておきます。
「難治性のBell麻痺およびHunt症候群に対する鍼治療効果の検討」
「難治性の Hunt 症候群における鍼通電治療と置鍼治療の効果比較」
「置鍼治療とリハビリテーションの併用が奏効した難治性Hunt症候群の1症例」
2.いつから施術を始めた方がいい?
いつから始めるということも悩まれる方がいるかと思いますが、もちろん、早い方がいいです。ですが、病院での治療効果の確認、重大な病気がないかの鑑別という点で病院側でも考えていくことがあるでしょうから、医師の方と相談した上で、施術を受けるのを考えていくのがお勧めです。
麻痺が長期化してしまっていると、筋肉は使われなくなり、動くようになるまで時間がかかってしまうので、筋肉が動けるようになるまで時間がかかってしまいます。
手術後や中枢性の場合は脳梗塞・聴神経腫瘍は、神経が出てくる場所で障害が起きていますし、鍼の施術効果は残念ながら低いと思いますが、それでも可能性に掛けてみたいという場合は、お近くの鍼灸院に相談してみるのもいいのではないでしょうか。
ラムゼイハント症候群の場合は、ウイルスによって生じているので、早めにウイルスに対する治療を開始した方がいいので、鍼灸よりもまずは病院での治療をしっかりと行って頂いた方がいいです。
原因不明の顔面神経麻痺(Bell麻痺)は顔面神経麻痺の6割程度を占めます。病院で診察を受けて、原因不明の顔面神経麻痺と確定の診断を受けた場合は、医師、鍼灸師に相談してみるといいですね。
3.どれぐらいの期間がかかる?
これはどんな疾患の方でも必ず聞かれる質問になりますが、麻痺に程度、麻痺をしてからの日数などの個人差がありますので、一概に言えません。ただし、一回目の施術で効果を実感できて、週に2~3回続ける方は1か月でもかなりよくなります。
施術の効果を実感しにくく、改善度合いが低いと感じる方は、よくなっていくまでの時間がかかりやすいので、半年程度かかってしまうことがありますし、麻痺が残ってしまう場合がありますが、最初と比較すると、改善を実感していくことが多いです。
麻痺は改善しても、感覚の違和感が残ってしまう場合がありますが、寒さ、疲労によって生じてくることが多く、その場合は、麻痺だけではなく、疲労除去もしていくことで、嫌な感じが続かなくなります。
顔面神経麻痺になると、顔の違和感(つっぱり、重さなど)を感じていることが多いですが、鍼灸の施術を受けると、この顔の違和感は軽減することが多いので、受けられた方はほとんどの場合、改善を実感しやすいのです。
顔面神経麻痺になる前までの状態を100%として、麻痺が生じた状態が0%だとすると、病院での治療、時間経過によって60%まで回復した場合、鍼灸を加えると80~90%程度になる場合が多いです。80~90%というのは、見た目は分からないけど、本人にしか分からない、微妙な感覚の違和感が残ることがあるからです。何かが壊れたとしたら、100%元に戻ることがないように、身体も100%になることはないです。
4.まとめ
顔面神経麻痺は、見た目が悪くなってしまうので、人前に出るのが嫌になってしまいやすいですし、話をしたり、食べたりするときに違和感があるので、本人に取ってはかなり不快な状態が続くものです。もし、鍼灸でも受けたらどうなのかと思っている方はお近くの鍼灸院に相談してみるのもお勧めです。
麻痺の改善も重要ですが、違和感からくる不快感の軽減は1回目から体験できることが多いですしね。