慢性閉塞性肺疾患は鍼灸や整体で改善するのか?

 鍼灸で対応することがある慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)とは、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれていた病気の総称になります。喫煙や有害物質の吸入によって生じた肺の疾患で、生活習慣病と言われます。整体との関係は、最後のまとめに書いています。

  1. 慢性閉塞性肺疾患とは
  2. 慢性閉塞性肺疾患と鍼灸
  3. まとめ

1.慢性閉塞性肺疾患とは

 慢性閉塞性肺疾患はCOPDと略されることが多く、以前は慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれていた疾患で、タバコによる影響が多い疾患で生活習慣病と呼ばれています。

 一般社団法人日本呼吸器学会によると40歳以上の人口の約8.6%(530万人)の患者が存在すると推定されいて、多くの方が未診断、未治療の状態と考えられているそうです。喫煙者の15~20%がCOPDを発症すると考えられています。

 鍼灸師や按摩マッサージ指圧師は国家試験があるので、慢性閉塞性肺疾患について学習しますが、特徴的な症状として、労作時呼吸困難、慢性の咳や痰、息を吐きにくいということを、覚えていきます。閉塞性肺疾患だけではなく、拘束性肺疾患もありますが、拘束性肺疾患の場合は、息を吸いにくくなり、呼吸困難、起坐呼吸が生じます。

 病院を未受診の方がいますが、加齢とともに、体力が落ちてくるというのは分かっているので、動いたときに息切れがしたとしても「体力が落ちたな」と思って終わりにしてしまう人が多いからではないでしょうか。

 20代までは運動をする機会も多いですし、動いて身体が辛くというのは改善しにくいでしょうが、30歳からは筋力も低下していくので、身体の不調に気づき始め、体力の低下を感じ始める方が多いのではないでしょうか。

 40代だと、仕事や家庭に追われて生活している人が多いでしょうし、30代とは違い、より体力の低下を強く感じ始めますが、病気の進行は穏やかに進んでいくので、閉塞性肺疾患の初期症状は、長めの階段を上がったときに生じる息切れなので、体力の衰えだろうと考えてしまいやすいです。

 体力の衰えで片づけられない場合もありますから、同年代と比べて歩くのが遅くなっただけではなく、「息切れ」を感じるようになったら、一度、病院を受診してみるといいのではないでしょうか。

 感染症で重症化していきやすいので、インフルエンザワクチンなども利用しながら、感染症対策はしっかりとしていった方がいいです。慢性閉塞性肺疾患ではヒュー・ジョーンズの基準というのがありますので、息苦しさが気になる方は基準も見ておくといいです。

  • Ⅰ度:健常者なみに動作が可能
  • Ⅱ度:坂、階段の昇降がつらい
  • Ⅲ度:平地で歩くのもつらい
  • Ⅳ度:休みながらでないと約46mも歩けない
  • Ⅴ度:会話、衣服の着脱で息切れを生じる

2.慢性閉塞性肺疾患と鍼灸

 慢性閉塞性肺疾患は鍼灸で対応していると効果があるなと感じられる疾患の一つですが、壊れてしまった肺が元に戻るという訳ではないので、鍼灸の施術効果がどのような機序なのかは分かっていないことが多いです。

 現代医学的に治せない、鍼灸の機序が分からないものであったとしても、継続した施術を受けることで、今まで起き上がるのも辛かったのが起き上がれるようになった。近所に買い物に出かけるのが辛かったが、買い物に出かけらえるようになった。

 病気は治っていないかもしれませんが、歩くのが大変だったのが歩けるようになるというのは、病気の方に取っては凄い大切なことです。動かない時間が長くなってしまえば筋力が低下し、寝たきりになってしまうので、動けるというのは介護予防の視点からも重要なことです。

 鍼灸がどのような病気に対して効果があるのか研究されていて、COPDに関してもいくつかの論文がありますので、以下に載せておきます。論文も合わせた内容は論文の下に書いていきます。

 「 鍼治療が有効であった COPD の 1 症例

 「 COPD患者の呼吸困難に対する鍼治療の有効性評価

 「 慢性閉塞性肺疾患に対する鍼治療の臨床効果の検討

 「 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の労作時の息切れに鍼治療が有効

 論文の内容では、慢性閉塞性肺疾患に対して、東洋医学的に考えて、効果の高いツボを利用しながら、鍼灸の施術を行っています。だいたい、1週間に1回程度の施術で効果が出ているので、症状が辛い場合は、最初は週に2回にしてから、1週間に1回程度にしていくのもいいですね。

 これらの論文では、鍼灸が何で効果があるのか?という点に言及はありません。東洋医学的な施術は、現代医学のように数値や画像で診断して施術を行う訳ではないので、施術後にどうなったのかを調べるのが非常に難しいです。

 東洋医学は鍼灸だけではなく、漢方もありますが、漢方もどうなったのかを調べるのが非常に難しいです。ただ、苦痛を持っている方にとってみれば、鍼灸、漢方で苦痛が除去できるのであれば利用したいと思うでしょうし、実際に受けている方も多いです。

 現代医学でよくならないから東洋医学で対応するというのは、いろいろなところで行われているので、東洋医学は補完代替医学とも呼ばれています。補完代替医学とは、現代医学で対応しきれないもの、現代医学で原因が不明なものなどのときに、現代医学を補完していくことができる医学という意味になります。

 海外でも鍼灸が研究された結果、各国で資格制度があり、多くの先進諸国では鍼灸は現代医学で対応できない場合や健康管理に利用されています。

 現代医学とは違い、東洋医学を使った診察では、舌、お腹、脈などを確認し、日々の体調からその人の身体の状態を確認し、身体全体を整えていくことで、辛い症状を出ないような身体にすると考えながら行うので、施術もオーダーメイドになります。

3.まとめ

 鍼灸の資格を取得するときには、現代医学を多く習い、病気は治すのが難しいというも理解していくので、資格を取得したときは、鍼灸でどれだけよくなるのか、どうやって施術をしたらいいのか不安に思うことが多かったです。

 東洋医学の診察を加えながら、身体は変化していくのではないかという思いで施術を継続していくと、現代医学的に難しくても東洋医学を使うと苦痛が軽減できるというのを何度も経験しました。

 慢性閉塞性肺疾患もその一つで、継続していくことで苦痛が軽減できることが多いので、信頼できる人に、一度、相談してみてもいいのではないでしょうか。私は対応できる鍼灸師を増やしたいので、鍼灸師の卵の教育、鍼灸師の教育を今も継続して行っています。

 整体で改善が生じるかどうかは、整体という資格制度がなく、研究も行われていないので、不明です。ただ、私自身は手技で施術を行っているときでも、呼吸が楽になったというのはよくあることなので、しっかりと行っていけば個人差はありますが、苦痛の軽減が得られるのではないかと思っています。

プロフェッショナルによる施術

 当院の院長は、訪問での施術、鍼灸専門学校での鍼灸師の育成、現場で働く鍼灸師などへの技術・知識指導も行っており、鍼灸や整体で様々な疾患も経験してきております。

院長 長谷川聡