PCOS(多嚢胞性卵巣症状群)と東洋医学
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は比較的多い疾患ですが、妊娠しにくくなってしまうために悩んでいる人も多く、鍼灸でよく対処させて頂く疾患になります。
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は、卵巣で男性ホルモンが多く作られてしまうために、排卵しにくくなる疾患で、女性の20~30人に1人の割合でみられるとされています。卵巣で成長した卵子が排卵されないために、排卵されなかった卵胞が卵巣に残ってしまう状態が超音波で見れるために、ネックレスサインと言われています。
自覚症状としては月経周期が長くなりやすく、にきび、毛深い、肥満が生じることがあります。妊娠を望まない場合は、ホルモン療法が行われることが多いです。
妊娠を希望する場合は、排卵誘発剤のクロミフェンが用いられることがあります。クロミフェンが無効の場合には、ゴナドトロピン療法を行うことで排卵をこさせる状態にします。
卵巣にたくさんの卵胞がたまっているために、排卵誘発によって一度に全ての卵胞が大きくなり、排卵してしまうと、卵巣が腫れあがり、お腹や胸に水が溜まってしまうことがあり、卵巣過剰刺激症候群といい、重症化すると、血栓症や腎不全を併発することがあります。
たくさん排卵してしまうと、多胎になるリスクもあるために、医師の指示に従い、しっかりと管理していく必要があります。他には手術やインスリン抵抗性がある場合には糖尿病の薬が利用されることがあります。
PCOSは原因もわかっていないために、現代学的には停滞している物(卵胞)を成長して出す、停滞している物を取り除くという療法になっていきますが、東洋医学的には身体の状態を整えていくことで、妊娠しやすい身体作りをしていこうと考えていきます。
一般的には理解されにくいところではありますが、東洋医学では身体の中に気血水(きけつすい)という3つの物が流れていると考えていて、一つでも不足や停滞してしまうと、様々な症状が生じると考えていきます。
PCOSと関係しやすい東洋医学的な考え方は、血(けつ)の不足が大きく関与していると考えていきます。血が不足すると月経血が少なくなりやすく、月経周期が長くなってしまうと考えていきます。
詳細に見ていくと、血の流れには気(き)が必要であり、冷えがあると流れが悪くなってしまうために、実際には、より詳細に身体の状態を確認していおくことが大切になります。
施術をさせて頂いている経験からすると、PCOSの方に対して東洋医学的に施術を継続していくと、身体の状態がよくなることが多いです。どういった状態になるかと言えば、「何となく調子がよい」「元気になった」「身体が冷えない」というように、調子がいいと言えるような表現が増えることになります。
その他にも、頭痛、腹痛、めまい、疲労感など、症状としては強くないけど、不快と言える状態が軽減していく傾向があります。この状態のときに、卵巣を病院で見てもらうと、卵胞もしっかりと成長していて、順調に排卵が行われることが多いです。
こういった状態を論文でまとめられていればいいのですが、東洋医学の施術では、現代医学の論文形式でまとめるのが難しいために実験データと言われるものが少ない傾向があります。
鍼灸の施術は東洋医学の考えを用いていくために、身体の外から鍼灸、身体の中から漢方を使うというやり方をすることも可能です。
女性に対して用いられやすい漢方は、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」「加味逍遙散(かみしょうようさん)」「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」があります。
「当帰芍薬散」は身体にある血が不足しているだけではなく、水の停滞が生じている場合に効果が見られやすい漢方になります。PCOSでは血の不足となりやすいために、「当帰芍薬散」も用いられやすい漢方と言えます。
「加味逍遙散」は肝鬱脾虚(かんうつひきょ)という状態に用いる漢方薬で、月経や排卵は肝が関係しているので、肝を整えることで、排卵をスムーズにさせるという考え方です。脾虚という状態は、身体のエネルギー(気血水)を生成するところなので、肝が異常になってしまったために、生殖器の活動が低下し、さらにはエネルギーを生成する脾の働きも低下させてしまっています。
「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」は身体の中に血の停滞である「瘀血(おけつ)」がある人に用いる漢方薬になります。PCOSの場合は、卵巣に排卵されない卵胞があることで、塊が出来ていると考え、東洋医学的には瘀血とも言える状態なので、「桂枝茯苓丸」も用いられやすい漢方になります。
「当帰芍薬散」は身体の虚弱な人に用いられやすく、「加味逍遙散」と「桂枝茯苓丸」は身体が中程度以上の人に用いられやすいものになります。漢方は様々な使い方があるために、これらの漢方を少し変化させたものもありますし、他の物や、これらの物を合わせて服用する場合があります。
漢方は東洋医学的な考え方で用いられてきたものなので、しっかりとした診断のもとに用いられていくと効果が出やすいです。医師や薬剤師などは、漢方が好きな人でないと深く勉強している人がいないために、信頼性が低く考えられがちなところがありますが、体質にあったものを服用すると、非常に効果的なことが多いです。
私自身も体調不良があるときに鍼灸だけではなく、漢方も合わせて利用することがありますが、体質にばっちりと合ったときの漢方の効果は凄いと実感しております。鍼灸師は東洋医学を学校で習いますが、本格的な知識を学ぶという点では漢方などは学習しないので、私自身も手探りで勉強を継続しています。
私自身は医薬品登録販売者の資格も持っているので、身体の状態を確認して、合いそうな漢方があれば、ご紹介することがあります。
もし、PCOSでお悩みなら一度、ご相談下さい。