マッサージはランナーの疲労回復効果がある

 海外の論文になりますが、「走ったあとにマッサージを受けると、何もしなかったり、アイスバスに浸かったりするよりもランニングエコノミーなどの回復が促進された」というのがあります。

Effects of Massage and Cold Water Immersion After an Exhaustive Run on Running Economy and Biomechanics: A Randomized Controlled Trial

 ランナーにとっての重要な指標といわれるのは以下の3つあります。

  • VO2MAX(最大酸素摂取量)
  • LT値(乳酸性作業閾値)
  • ランニングエコノミー

VO2MAXとは

 VO2MAX(最大酸素摂取量)は、言葉の通りですが、Vは量、O2は酸素、MAXは最大値なので、運動しているときに体内に酸素を取り込むことができる最大値になります。体内に取り込む酸素量は1分間で計測します。

 VO2MAX(最大酸素摂取量)が高いということは、体内に取り込むことができる酸素量が多いということなので、酸素を使って運動をしていく有酸素の運動能力が高いということを示していきます。

 計測するためには、トレッドミル(ランニングマシーン)やエアロバイクで行いますが、専用のマスクを用いて、呼気ガス分析装置が必要なので、一般の人が計測するのは難しいですね。公共施設や企業で測定してもらえることがあるので、計測したいと思っている場合は、計測できるイベントを狙う必要があります。

LT値(乳酸性作業閾値)とは

 LT値(乳酸性作業閾値)は血液中の乳産濃度を計測するものです。運動をすると「糖」が分解されることでエネルギーが発生しますが、「乳酸」も生成されます。通常は「乳酸」は有酸素運動よりも無酸素運動で生じやすい物質になります。

 LT値(乳酸性作業閾値)は、人によっても違いがあり、トレーニングでも変えていけるものです。では、どういったものかというと、運動をして徐々に強度をあげると、血液中の乳酸濃度が急に上がり始めるポイントがあり、これをLT値(乳酸性作業閾値)と言います。

 LT値(乳酸性作業閾値)よりも強い強度(ランニングで言えばスピード)にすると、体内の糖が利用されやすくなります。逆にLT値(乳酸性作業閾値)よりも低い強度にすると脂肪がエネルギーとして使われやすくなります。身体は単純ではないので、LT値(乳酸性作業閾値)の高い強度で運動した場合でも、糖だけではなく、脂肪も利用されますし、低い強度で運動した場合でも、脂肪だけではなく、糖も利用されます。

 乳酸は以前は疲労物質と言われていましたが、現在はエネルギーとして考えられているので、悪い物ではないのですが、乳酸を生成する過程で、水素イオンが発生してしまったり、乳酸は糖を利用して作られていくので、筋肉に蓄えられている糖がなくなってしまうので、血中の乳酸濃度が低い方が、長く運動を継続できる状態になります。

ランニングエコノミーとは

 

 ランニングエコノミーは「走の経済性」とも言われ、「走速度をどれだけ少ない酸素摂取量で走れるか」という指標になります。ランニングエコノミーが優れている人の場合は、酸素摂取量が少ないので、エネルギー消費量も抑えることができます。

 マラソン選手などの長距離選手の場合は、長い時間、高いパフォーマンスを発揮しなければいけないので、燃費がいい状態になっている必要があります。

 ただ、一般の人が健康やダイエットを中心で考えていく場合は、燃費がよいとエネルギーを消費してくれないので、ランニングエコノミーは高ければいいという訳ではなくなります。ただ、ランニングをしていくと、身体が「ランニングに耐えられる」ようになるので、自然とランニングエコノミー、LT値(乳酸性作業閾値)、VO2MAXが上がっていきます。

まとめ

 今回の論文ではマッサージによってランニングエコノミーなどの回復が行われたということですが、マッサージは筋肉をほぐしたりすることで、体内の血流循環がよくなると考えられるので、その他の指標も上がりやすいのではないでしょうか。

 学生スポーツの中でも陸上部の人は、学生時代からお互いにストレッチやマッサージをしていることが多いので、自然と効果を実感しているのではないでしょうか。