トリガーポイントとは?

1.トリガーポイントの歴史
トリガーポイントは筋肉の硬結(筋筋膜性疼痛)であり、1983年アメリカの医師である、ジャネット・トラベルとデイビッド・シモンズによって提唱されたものになります。トリガーポイントは押すと、押した場所に非常に強い痛みを生じるだけではなく、押した場所以外にも響く感じ(関連痛)があり、ツボと約70%程度一致しているという報告もあります。
しかし、トリガーポイントは筋肉との関連性が強いものだということで、経絡に所属をしている経穴とは違うものという結論になります。
2.トリガーポイントの特徴
トリガーポイントの特徴としては代表的なものに以下があります。
- 限局した圧痛
- 索状硬結
- 典型的な関連痛のパターン
- 局所単収縮反応
- 症状の再現
- ジャンプサイン=逃避反射
これはあくまで触れていったことで分かることであり、トリガーポイント自体は触れなければ何も感じない場所でもあります。どういうことかというと、「この場所の痛み」は「〇〇筋のトリガーポイント」と関係しているという「現象」は存在しているのですが、「痛み」があったとしてもトリガーポイント自体が痛くて仕方がないという状態は、ほとんどない状態になります。
例えば、胸鎖乳突筋という首の前側にある筋肉がありますが、この筋肉にはトリガーポイント(非常に簡単に言えば強い圧痛が生じる場所)があり、トリガーポイントを押すと関連痛が生じます。以下の図は正確ではないですが、赤色がトリガーポイント、青色が関連痛の場所になります。

ここにあるようなトリガーポイント(赤)を押すと、それだけでもかなり痛みがありますが、痛みだけではなく、青の場所にも響く(関連痛)のであれば、トリガーポイントをしっかりと触れられた状態と言えます。トリガーポイントを押さない限りは、青の関連痛には何も感じないのが普通です。
しかし、頭痛がよくある人の場合は、頭顔面部の筋肉の硬結や神経・血管の圧迫によって痛みを生じている場合もありますが、そこで症状が改善しない場合は、原因がその場所ではないと考えていくことができます。
このようなときに「トリガーポイント」を知っていると、「胸鎖乳突筋のトリガーポイントは頭痛に関連する」ということが分かるので、胸鎖乳突筋を触れてみて、圧痛がないかを触れていけます。胸鎖乳突筋を触れていくと、非常に強い圧痛で身体を反らすぐらいのものがあり、さらに頭痛症状が再現または強くなる場合もあり、そのような状態があれば、「治療点」として非常に効果が高いと考えていけます。
3.トリガーポイントの難しい点
トリガーポイントは、全身にある多くの筋肉の中に何点かあると考えられていて、筋肉ごとに関連痛もあるので、トリガーポイントと関連痛を覚えていく必要があります。例えば、先ほどのように胸鎖乳突筋は頭痛とも関係しやすいということを一つ一つの筋肉事に覚えていくことになります。
上で見た胸鎖乳突筋のトリガーポイントの関連痛は「頭痛」と説明しましたが、細かく言えば「頭頂部」「前頭部」「後頭部」「目付近」「顎」「胸の上部」にも関係していくので、「胸鎖乳突筋=頭痛」と単純に覚えにくいところがあります。さらに書籍によっても若干の違いもあるので、「ここまでしか絶対に出ない」と言えないので、「何となくこのあたり」に関連痛が生じるというように覚えていくことになります。
ということで、トリガーポイントはかなりの暗記力が求められるものとも言えます。ただ、西洋医学的に筋肉を中心に治療しようとすると、「筋肉のどこに刺すのが効果的なのか」を考える必要があり、答えがないものになるので、触れていく経験値も求められるので、トリガーポイントを使うということは、有効性が高そうな場所を利用できるという点では非常にメリットと言えます。
トリガーポイントを使う鍼灸師では多くの場合、西洋医学な刺鍼をする人で、筋肉により効果的に刺激を与え、広く効果(関連痛も治す)を出すという目的で利用している場合が多いのではないでしょうか。
4.臨床とトリガーポイント
臨床では多くの症状を伺い、さらに体表を触れていくことで圧痛も理解が進んでいくので、経験が長い人であればあるほど、身体のこの辺りはみんな圧痛が多くあるよなという知識があります。手技療法と言われるマッサージ系では特に全身をくまなく触っていくので、いろいろな症状、いろいろな年代の方を触れた結果として、圧痛が生じやすい場所を手で覚えていくことになります。
この圧痛が生じやすい場所は、構造的に弱点にもなりやすく、負荷がかかりやすい場所にもなっていることが多く、こういった場所は経穴が存在することもあり、トリガーポイントも存在することが多いです。なぜなら、トリガーポイントは経穴と約70%近く一致していますし、昔の人たちも触れていく、刺すことで変化を理解して蓄積したデータがツボとも言えるので、身体を触れる経験を積めば積むほど、どちらも現象、事実、知識として理解していくことになります。
そのため経験がある人では手だけで治療を行えることもあります。手だけで治療することができるので、この状態でも数をこなしていくと慣れていくのですが、この手だけに理論を乗せると非常に再現性がより高い状態になるので、技術向上・知識向上を図っている方たちも多くいます。
初学者はどうすればいいかといえば、経験がない部分を「知識」先行で補うことになるので、逆に言えば、ここで紹介したトリガーポイントを覚えていくと、この場所は圧痛が多い(トリガーポイント)というのが分かるので、経験がなくても、治療点を探すことができます。これはトリガーポイントだけではなく、経穴も同様なので、知識を先にためて現場に出るというのが臨床への勉強と言えます。
5.トリガーポイントを使えるようになるにはどうすればいいか?
うまくなるためにはどうした方がいいかと言えば、「数をこなす」が一番です。よく「コツ」という言葉もありますが、確かに「コツ」もあるのですが、うまくできなくて悩んだのを解決したのが「コツ」であり、「コツ」には悩みもないと実際にはつかみにくいです。
例えば、ほとんどの方が箸を扱って、食事をして細かいものを取ることができますが、「コツ」はあるでしょうか?確かに、持ち方とか動かし方というのはありますが、小さいときから使ってきたことで、いろいろな状況に対応できる「技術」が身についているので、上手になるためには「数をこなす」ということが必要になります。
特に子どものうちは、新しい物・新しいことがあると、ひたすらそれだけを繰り返して熱中するので上手になりやすい傾向があります。経験があると、経験によって楽をしようとするので、逆に身に付きにくいこともあります。
例えば、箸の持ち方でも正しい持ち方をせずに、違う持ち方に慣れてしまうと、正しい持ち方に戻すのは非常に大変ですよね?技術もこれと同じところがあります。ただ、違うところ、違うやり方でも突き詰めていければ、独自に技術に発展させていくことも可能なので、「絶対にこれ以外は正しくない」とは言えないところでもあります。
前置きが長くなりましたが、トリガーポイントを使えるようになるためには「触れる」ことができるようにならないといけないです。では、人体に触れる基本は「まっすぐ」です。どういうことかと言えば、鍼で言えば「直刺」というまっすぐに鍼を入れられるようになる必要があるのと同様、手技(人の身体を押す)でも真っすぐが基本になります。
どういうことかと言うと、人体は丸い円構造をしていると同時に、パーツは三角形なので、安定性があるように見えて、実は非常に不安定な構造をしていて、絶妙なバランスをしています。ということで、実際には平らな状態に見えても微妙な角度があるので、まっすぐに押す・触れるのは非常に難しいです。しかも圧を入れていくスピードが速いと筋肉などの構造物がコリっと逃げてしまうので、せっかく筋肉を正確に触ろうとしてもずれてしまうことになります。
ということで、トリガーポイントを触れるということは、まっすぐに緩やかなスピードで押せるようになる必要があります。触り慣れている人は揉むように触れてしまうことで、物を触れることはできても1点で抑えるのが苦手な状態になりやすく、鍼で刺そうとすると、1点をとらえていないので、指では何となく触れられても鍼では逃してしまうことになりやすいです。
トリガーポイントとしても関連痛がはっきりと出やすいということでは、胸鎖乳突筋は非常に練習しやすいところなので、まずは自分の胸鎖乳突筋を「コリ」っとずらさずにしっかりと押さえて触れてみることです。場所を変えるとずれたりしてしまうことがあるので、その場合はまっすぐに押せていなかったということになります。何点か触れていけるようになると、そのうちの1点とかで、その場所の圧痛だけではなく、他の場所(頭部など)にも何となく圧迫感を感じることができたら、これがトリガーポイントの関連痛とも言えます。
この触り方が安定的にできたら、その深さ・方向に鍼を刺してみて、指で押した関連痛が再現できたら、トリガーポイントでの鍼ができるようになった状態と言えますが、頚部は刺激が入ると脳貧血を生じてしまう場合もあるので、刺入に慣れて、知識がついてからがおすすめですね。
またはトリガーポイントを調べてみて、自分がやりやすそうなところの1点をまずは練習してみて、1点ずつ身に付けていくと知識と技術が向上することにもなります。「トリガーポイント 足」などで検索して、画像を見てみると、自分でやりやすいと思うものが見つかりやすいですね。
技術の順番としては、「触れる」「触れて再現できる」「鍼を当てられる」です。
この段階まできたら、鍼を刺さなくても、トリガーポイントを押さえてストレッチ、運動を組合わせていきながら、鍼以外への施術へ応用することも可能です。

