変形性膝関節症と痹証
鍼灸院、整体院、整骨院、整形外科など、身体の痛みをみるところであれば、必ずといっていいぐらい診る機会があるのが、変形性膝関節症になります。
膝関節は体重を支えていくとこころなので、かなりの負荷がかかってしまうために、骨が壊れてしまわないように、膝の骨と骨の間に軟骨があります。
この軟骨は骨と骨がぶつかっても壊れないようにクッションの役割があるのですが、加齢とともに軟骨がすり減ってしまって、骨同士がぶつかって変形と痛みを生じてしまうものです。
50歳以降から多くなりますが、比較的、女性に多い傾向があります。
変形性膝関節症は、痛みと付き合っていくと考える人が多いですが、鍼灸でも痛みが消失しやすい疾患になります。ただし、症状が進んで変形が強い場合は施術をして、その日から数日は痛みが軽減するという場合が多いです。
変形性膝関節症は膝に負担をかけないことが大切なので、体重コントロール、膝関節保護のための筋力トレーニングも行っていくことが必要です。
痛みのコントロールには漢方も非常に効果的なのですが、漢方は本来、その人の体質に合わせて用いないといけないので、東洋医学的な体質をみれる人でないと効果は薄いです。
今でもよく用いられている漢方は「防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)」になります。ただ、変形性膝関節症に「防已黄耆湯」を使ったら効果があるかというと微妙なところです。
痛みが軽減したとしても、治療をやめたり、動いた入りすると悪化をするので、変形性膝関節症では、徐々に活動量を増やすことを注意し、運動療法(筋力強化)をしていくことが大切です。
手術という方法もありますが、リスクもありますし、できるだけ、そこまでいかずに改善していく方がいいですね。
東洋医学的には頑固な痛みは「痹証(ひしょう)」と考えていくので、変形性膝関節症も痹証として考えていくといいです。
痹証
痹証とは風邪(ふうじゃ)、寒邪(かんじゃ)、湿邪(しつじゃ)が合わさって生じているもので、風邪と湿邪が熱化したものがあり、以下のように分類されます。
- 風痹(行痹):ふうひ、こうひ
- 寒痹(痛痹):かんひ、つうひ
- 湿痺(着痹):しつひ、ちゃくひ
- 熱痹
この分類はどういうことかというと、風邪・寒邪・湿邪が合わさって生じますが、風邪が強い場合、寒邪が強い場合、湿邪が強い場合のパターンがあるということで、症状に違いがあります。
- 風痹:移動しやすい痛み
- 寒痹:強い痛み、冷えると悪化
- 湿痹:しつこい痛み、雨天で悪化しやすい
- 熱痹:発赤、腫脹、熱感、疼痛がある場合
変形性膝関節症だと痛む場所は移動しないので、寒痹、湿痹、熱痹によって生じていると考えていくことができます。
痛みの原因を痹証として捉えていくことで、東洋医学的な施術内容を考えていくことができるので、痛みの状態をしっかりと把握していくことが大切になります。
鍼灸で痛みも軽減していきますが、変形性膝関節症の場合は、痛みや腫れで身体の動きも変わってしまって硬くなってしまっている場合が多いので、身体の動きを改善していくと効果もよく、痛みの軽減に向かいやすい傾向があります。